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後鳥羽院撰「時代不同歌合」その三 [時代不同歌合]

その三 中納言家持と藤原清輔(再撰本=中納言国信)

家持と国信.jpg

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藤原清輔.jpg

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七番
   左                中納言家持
まきもくのひばらもいまだくもらぬに小松が原にあは雪ぞふる(新古今春上)
   右                藤原清輔
たつた姫かざしのたまのををよわみ乱れにけりとみゆる白露(千載秋上)
(注:再撰本では家持と国信が合わされている。「かすがののしたもえわたる草の上につれなくみゆる春の淡雪(新古今春上)=国信」)

八番
   左
かみなびの三室の山のくずかづら裏ふきかへす秋は来にけり(新古今秋上)
   右
今よりは更け行くまでに月はみじそのこととなく涙おちけり(千載雑上)
(注:再撰本では家持と国信が合わされている。「なにごとを待つとはなしにあけくれて今年もけふに成りにけるかな(金葉冬)=国信」)

九番
   左
かささぎのわたせる橋におく霜の白きをみれば夜ぞ更けにける(新古今冬)*
   右
冬がれの森のくちばの霜の上におちたる月の影のさやけさ(新古今冬)
(注:再撰本では家持と国信が合わされている。「山ぢにてそほちにけりな白露のあかつきおきの木々の雫に(新古今旅)=国信」)

(参考)

http://www.emuseum.jp/detail/100258

家持と国信二.jpg

重要文化財 1帖 紙本墨画 28.3×49.6 鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館 A-19

(周辺メモ)

http://dep.chs.nihon-u.ac.jp/japanese_lang/pdf_gobun/158/158_02_oobushi.pdf

『時代不同歌合』の番いの研究 ――初撰本と再撰本について――(大伏春美)

2 初撰本と再撰本の番いの変更について  

本作品は藤原公任の『三十六人撰』の形式を踏襲するから、 樋口氏の指摘のように、ひとり三首ずつの秀歌をみることと、 歌合の番いとして対者との組み合わせをみることの二つの楽しみ方がある。 さて、初撰本と再撰本では、寺島氏の指摘のように四組の番いの変更が見られる。即ち

初撰本 家持――清輔、篁――国信、業平――西行、 伊勢――良経
再撰本 家持――国信、篁――西行、業平――良経、 伊勢――清輔

である。左の歌人はそのままで、右の歌人は清輔が後ろにまわってずれている。以下で具体的にみてゆくことにするが、そ の前にこの作品の番いの傾向を知るために、わかりやすい例を取り上げたい。

(初撰本=「家持と清輔」と再撰本=「家持と国信)

初撰本の家持・清輔の番いは、『万葉集』をまとめた家持に対し、六条藤家の歌学者清輔であり、私撰集の続詞花集』他 を撰びまた歌学書を多くまとめた実力者であるから、和歌に造詣の深い二人を並べ、適切な組み合わせと思われる。 一方、再撰本の家持・国信の番いの歌を見ると、それぞれの 歌もうまく対応しており、良い組み合わせと考えられる。また 国信は実力や業績は清輔に劣るにしても、堀河歌壇で活躍した 人物であり、『堀河百首』への関与や詠出、自家の歌合の主催 なども見られる。
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