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狂画の鬼才「河鍋暁斎」(その十一) [河鍋暁斎]

(その十一)「風俗鳥獣画帖」(その四 三夕)

 その一(「阿国歌舞伎・其一・念仏踊」)、その二(「阿国歌舞伎・其二・散楽」)、その三(「三津木辰之助 槍踊」)の次に、趣向が変わって、「三夕(さんせき)」の図となる。
この「三夕」は、「三夕の和歌」の意であろう。この「三夕の和歌」の作者、「定家」を中央にして、左の人物が「西行」、右の人物が「寂蓮」ということになろう。
 その人物を見立てているものは、その背後の風景で、「西行」には「浦の苫屋」、定家には「鴫立つ沢」、そして、「寂蓮」には「槙立つ山」が描かれている。

■ 三夕の和歌
新古今和歌集の中の、「秋の夕暮」という結びの優れた三首の和歌。定家の「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮」、寂蓮の「さびしさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮」、西行の「心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮」の三首。三夕。

新361「さびしさは その色としも なかりけり 真木立つ山の 秋の夕暮れ」(寂蓮)
新362「心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ」(西行)
新363「見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ」(藤原定家)

 この「三夕の歌」は『新古今和歌集』の「秋上」に3首連続(361、362、363)で並んでいる。

三夕.jpg

「風俗鳥獣画帖」(その四 三夕)絹本着色 (各一九・一×一四・六cm)
『特別展覧会 没後一二〇年記念 絵画の冒険者 暁斎 近代へ架ける橋(京都国立博物館)』所収「作品解説9」


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