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江戸の狂画・奇想画(その五) [腹筋逢夢石]

その五 山東京伝・歌川豊国らの「蛙・蝸牛」

蛙・蝸牛.jpg
『腹筋逢夢石(山東京伝作・歌川豊国画)・初編』所収「蛙・蝸牛」

 この「初編」(前編)で人気を博した「かいる(蛙)」周辺の細かい戯文(山東京伝作)の、そのポイントは、「西行と歌を詠んだ江口の君という名高い太夫殿が、窓の格子に出て、『てもしほらしい蛙の声、これを聞くにつけても主(ぬし)さんは、どふしてゐさんすやら、ほんに可愛い蛙じゃのう』」という、この「蛙」と、その「蛙」の面に「手洗(ちょうず)の水」をかける「女将(おかみ)」さんとの会話なのである。
 これが、変じて、古今亭志ん生の落語、「蛙の女郎買い」(別名・蛙の遊び)につながって行く。

[ 昔は浅草から吉原に掛けて大きな田圃がありました。この田圃を突っ切って冷やかしに行ったものです。
<惚れて通えば千里も一里 長い田圃もひとまたぎ>
学校じゃ、あんまり教えないけれど・・・、毎晩冷やかしがゾロゾロ田圃を通り、女の噂を言い合うので、田圃の蛙が覚えてしまい、
「オイどうだい、人間ばかり冷やかしに行くから、蛙仲間もみんなで冷やかしに行こうじゃねえか。殿様、お前は背中に筋があって様子がいいよ。アカも行くか、アオもみんなで行こうぜ、エボ、汚ねえな・・・でも連れてってやろう。人間と同じように後足で立っていくんだ。いいか、はぐれたら踏み潰されちゃうから気ィ付けなよ」と繰り出した。
 ここが吉原だ。綺麗だな。見世に七人の花魁が並んでいるのを見て、
「おう、どれがイイ?」
「俺ァ、上(かみ)から四枚目の女がいいなァ」
「ん~俺ァ違うな、下(しも)から四枚目がいい」
「ああ、なるほど・・・?ん 真ん中だから同じだい」
「どうして、あの女がいいんだい」
「着ている仕懸けが『八橋』だからな、俺達ァ八橋は恋しいよ」
「なんていう名か聞いてみな。おい、若い衆さん、八橋の仕懸けェ着ているのは何てェ名前だい」
「私どもにはいませんよ」
「あすこにいるじゃないか」
「八橋の仕懸け着ているのはお向こうさんですよ」
蛙だから立ってたんで、目が後ろについていた。 ]

 右側の「蝸牛」は、「舞い舞いつぶり」で、「さらば角出して遊ぼうか、面白い、面白い」、そして、「とてもの事に、もう一本出して遊ぼう、こいつはてんとたまらねぇ」という科白で、右端の最後の科白は、「あゝ、夢なれ、夢なれ」とある。


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